GoogleDriveの運用が結構危ない橋を渡っていた話
皆さん、Googleドライブ使ってますか?GoogleドライブはGmailやGoogleカレンダーに並びGoogleワークスペースの代表的なサービスです。またGoogleワークスペースはITエキスパートから市井の人々までユーザー層が幅広いので、どのサービスも直観的に利用可能なUIに仕上がっています。私自身も誰から教わることもなく10年以Googleドライブを利用していました。しかしGoogleワークスペースを管理するAdmin側に回ってみると、この直観的に使える仕様が原因で、いろいろと困った現状を引き起こしていることに悩まされました。
先日Googleドライブの利用に関して調査・整理する機会がありましたので、その内容をもとに、特に非IT系の方向けに、どんな問題が起こりやすいのかをこちらの記事でも共有できればと思います。
そもそもGoogleワークスペースって何?
皆さんもプライベートでGoogleアカウントをお持ちではないですか。Googleアカウントを作成すると様々なサービスが利用可能になります。Gmail、Googleカレンダー、Googleマップといった便利系サービスやGoogleドキュメントやGoogleMeetといったビジネス系サービスまで無料で利用可能です。Geminiに聞いてみたところ、2025年5月時点でGmailだけで18億人以上のアクティブユーザーがいるようである。こういった便利なツールをよりビジネス向けに使いやすく一元的に管理できる形したサービスがGoogleワークスペースです。
組織向けなので、独自ドメインで運用できたり、ユーザー管理やセキュリティポリシーを組織がコントロールできるのが個人向けアカウントとの大きな違いです。これっつまりどんな組織でも共通して使う機能をバーチャル世界でレンタルできますよっていうオフィスサービスなんですね。実際のオフィスで必要なものに対応させると理解しやすくなるかと思います。
ツール | 機能 | 実際のオフィス |
---|---|---|
カスタムドメイン | user@yourodomain.comの設定 | 組織名/屋号 |
Gmail | メールの送受信 | 自分のデスクにあるメールボックス(社内外とのやりとり) |
Drive | ファイルの保存と共有 | 書類を格納するキャビネット |
Meet | オンライン会議 | 会議室や電話会議 |
カレンダー | 予定や会議の管理 | 会議室予約ボード、ホワイトボードのスケジュール表 |
グループ | メーリングリスト | 部署の名簿・回覧板(全員にまとめて通知・共有) |
ドキュメント | 文書作成 | 会議室のホワイトボードや共同で使う議事録ノート |
チャット | チーム間のテキスト会話 | オフィスの会話・伝言・メモ回し |
ユーザー管理 | アカウント作成・削除・権限の割当 | 入退室管理や組織名簿管理 |
管理コンソール | ポリシー管理・セキュリティ・監査ログ | 監視カメラと鍵管理盤 |
Googleワークスペースを使うと組織運営に必要な機能がオールインワンで扱えるようになります。大変便利な仕組みですね。
あなたは書類をどこにしまうの?
今回のテーマであるGoogleドライブは、バーチャル世界のキャビネットです。たくさんの書類を整理するためにキャビネットは必要ですよね。じつはこのキャビネットは個人用と組織用に2つあります。個人用がマイドライブ、組織用が共有ドライブという分類になっています。個人のGoogleアカウントでGoogleドライブを利用する場合、この共有ドライブは現れません。ワークスペースならではの仕様です。オフィスの例で例えると、部屋の中にあって誰でもアクセス可能な棚と個人デスクの横にあるキャビネットになります。
マイドライブは基本的にはプライベートな空間という扱いです。共有が必要な資料は、所有者がユーザーやグループを指定することで共有可能になります。たとえ管理者であってもマイドライブを見るためには特別なツールが必要です。このあたりはオフィスの個人デスクの鍵付きキャビネットと同じ運用イメージですね。管理者でもマスターキーがないと勝手に開けられませんし、監査など特別な事情がない限りはみだりに開けることは、はばかられます。
もちろん共有ドライブも、ロール×ターゲットの組み合わせで資料へのアクセス制御が可能です。
-
ロール(役割)
- Viewer:閲覧のみ可(ダウンロードや印刷は制限可能)
- Commenter:コメント可能・編集不可
- Editor:編集、再共有、削除が可能
- Content Manager:共有ドライブ内で編集+移動・整理が可能
- Manager:共有ドライブのすべての管理(メンバー追加など)
-
ターゲット(共有対象)
- 特定のユーザー(指定メールアドレス)
- Googleグループ(例:team@yourdomain.com)
- ドメイン内の全ユーザー(例:~~~@yourdomain.comなら誰でもアクセスok)
- リンクを知っている全員(セキュリティリスク高め)
さて、こうしてみると、どちらのドライブも保管/共有という点においては同じようなことができます。
パターン1. マイドライブに資料を保管
- 必要ならシェアする
- 対象者を狭く → 広く
パターン2. 共有ドライブに資料を保管
- 必要なら閲覧制限
- 対象者を広く → 狭く
しかしながら、運用時における大きな違いが資料の所有者は誰になるのかということ。マイドライブは個人、共有ドライブは組織が資料の所有権を保持します。そして個人が所有している資料はその組織からアカウントが削除されると同時に資料も消え去ります。
イメージは退職すると個人デスク全部捨てられるって感じです。削除された場合、誰かに共有している資料であっても、他人からも見えなくなりアクセス不可になります。一方で共有ドライブにある資料は組織のものなので、組織自体が消滅しない限りは無くなりません。
以上のことから、作成途中の資料や個人のToDoリストなどはMyDriveに、組織でシェアしたい書類は共有ドライブに入れる、という運用があるべき姿ですが、ここでもう一つの機能である「共有リスト」の存在により、事態は良くない方向へ向かいます。
共有リストのここが良くない
共有リスト自体は個人アカウント版でもGoogleワークスペース版でもある機能です。あなたに共有されたファイルやフォルダが一覧となっているので、個人版であれば自分の書類はマイドライブ、他人の書類は共有リストという形で見えます。
ただし共有リスト自体は「あなたに共有された資料の新着リンク情報がここにあります」という通知ボックスでしかありません。あくまで新着リンク集なので、フォルダ構造がなく時系列で並ぶだけですし、自分で並び替えや削除ができません。そこで人は考えます。自分好みに管理したいな、と。おもむろに資料を右クリックするのでしょう。
すると、Download, Make a copy, Add shortcut, Add starredと整理整頓に使えそうな機能が現れます。
機能 | 説明 | 元ファイルとの関係 | 整理方法の特徴 |
---|---|---|---|
Download(ダウンロード) | 自分のPCに保存。オフライン作業やアーカイブ用。 | 無関係になる | ローカル保存 |
Make a copy(コピーを作成) | 自分のマイドライブに別ファイルとして保存。編集・再共有が自由。 | 無関係になる | 自分用に再利用・再共有可能 |
Add shortcut(ショートカット) | 元ファイルへのリンクをマイドライブに追加。階層整理も可能。 | リンクが続く | 好みに応じてフォルダに配置可能 |
Add to starred(スターを付ける) | 星印で「スター付き」に表示。一時的なお気に入り管理。階層は持てない。 | リンクが続く | 単一ビューでの目印・検索用 |
管理者の立場から見ると、ユーザーが共有された資料を個人用に整理する場合は、「Add shortcut(ショートカットを追加)」や「Add to starred(スターを付ける)」を利用してほしいところです。しかし残念ながら、この2つの選択肢はファイルを右クリックして表示されるメニューには直接現れず、「Organize(整理)」をさらに選ばないとたどり着けません。
この構造は、ユーザーが誤って「Make a copy(コピーを作成)」を選んでしまう原因にもなっています。その結果、各自のフォルダに「Copy of ----」といった資料が乱造されたり、ファイルの先祖返りが起こってしまったりと、せっかくのクラウド資料の利点を活かせない結果になってしまうのでした。
共有専用アカウントの存在
私のいる組織ではなぜか共有専用のアカウント「SharedDrive@...」のマイドライブを共有して共有ドライブ代わりに利用するという運用を行っていました。調べてみると、2017年3月以前は共有ドライブという仕組みは存在せず、組織でファイルを共有するには、誰かのマイドライブを共有ハブにするしかなかったようです。しかしながら問題としては先に挙げた通り、アカウント削除=資料消失のリスクであったり、ファイルの所有権が個人に依存して管理者による集中管理が難しい状況で合ったりと中々大変だったようです。共有専用アカウントを利用する方法は、当時としては合理的な“苦肉の策"でしたが、現在は共有ドライブを使う方が圧倒的に安全で管理しやすいベストプラクティスです。
運用指針
Google ドライブは便利なツールですが、使い方を誤ると資料の所在不明や消失、引き継ぎミスの原因になります。そこで管理者としては、以下のように「MyDriveは個人作業用」「共有ドライブは組織資産」「共有リストは通知ボックス」という役割分担を明確にし、資料を安全かつ効率的に管理できる体制を目指すことにしております。
- 資料の保管場所は共有ドライブ
- 組織で継続的に使う資料は必ず共有ドライブに保存する
- MyDriveは一時的な作業スペースと割り切る
- 個人のメモや作成途中の資料のみ。完成したら共有ドライブに移動
- 共有リストは単なる新着情報の通知ボックスで過度に依存しない
- 整理したい場合はショートカットやスターを活用
- よく利用するファイルはスターでクイックアクセス
- 階層管理が不要な場合はスター機能を積極的に活用
これらの問題に心当たりがある組織は、ぜひ共有ドライブへの移行と運用ルールの整備を検討してみてください。最初は少し手間がかかりますが、長期的には確実に管理が楽になりますよ。
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