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AIエージェント開発時代に、開発現場はどう変わり、エンジニアは何を学ぶべきか?

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はじめまして、株式会社ジャンボ CTOの花野です(@hnnkns)
当社の技術的取り組みや、日々の開発での気付き・発見・ノウハウ等について継続的な発信をするために、JamboTechBlogを開設することにしました!

この記事は記念すべき最初の記事です。

今回は 「AIエージェント開発時代に、開発現場はどう変わり、エンジニアは何を学ぶべきか?」 を、実際に開発に携わる立場からまとめます。

めまぐるしく進化する AI を実際に使ってきた経験から、過去・現在・未来 の三つの時間軸でソフトウェア開発の姿を振り返りつつ、私たち人間がどのように働き方を更新していくべきかを考えてみます。

過去:AI活用の変遷を振り返る

AIによるプログラミング支援が本格化する前、開発者は主にIDE(統合開発環境)の基本的な補完機能や、Stack Overflow, Qiita, Zennなどのコミュニティに頼っていました。この時代、コードの生成やデバッグは完全に人間の知識と経験に依存していました。

補完ツール期:Copilot 登場前夜

AIを使った開発支援といえば、まず思い浮かぶのはGithub Copilotですよね。
登場当初は「おお、補完してくれる」「英語のコメント書いたらコードが出てきた!」という驚きがあり、Copilotの登場は、開発現場に大きな衝撃を与えました。
そこから少しずつ、「AIに任せられること」が広がっていきます。
主な革新点:

  • コメントからコードを生成する能力
  • リアルタイムでのコード提案
  • 繰り返し作業の自動化
  • プロジェクト内の既存コードを学習し、一貫した補完を提供

この頃の開発は、AI=補完という位置づけでした。
「人間が中心にいて、AIが手伝う」という関係でまさにCopilot(副操縦士) という感じです。

アシスタント期:Copilot & ChatGPT が日常を変えた瞬間

2022年11月、OpenAIはChatGPTを一般公開しました。
これは単なるコード補完ツールではなく、自然言語での対話を通じてプログラミングの問題解決をサポートする新しいタイプのアシスタントでした。

ChatGPTを活用した開発者は以下のようなタスクを効率化できるようになりました:

  • コードの説明と詳細なドキュメント作成
  • バグの診断と修正提案
  • アルゴリズムの設計相談
  • ライブラリやフレームワークの使用方法の質問
  • レガシーコードの理解と最新化の提案

この時期の特徴は 「人間が中心にいて、AIが手伝う」 という関係性でした。AIは優れたアシスタントでしたが、あくまでも開発者が主導権を握り、最終判断を下していました。

“アシスタント” の限界

しかしアシスタント型では、ミスの検知・訂正や複数ファイルを跨いだ推論に限界があり、「人が舵取りし続ける」 必要がありました:

  • 生成コードがビジネス要件を満たしているかは人間が判断
  • コードベース全体の把握が困難
  • 複数ファイルを跨いだ大規模な変更の理解と実装が難しい
  • ビジネスロジックの理解に限界
  • 生成したコードの品質保証は人間に依存
  • 統合テストなど複雑なテストシナリオの実装が困難

しかし、Github Copilot, ChatGPTの登場からわずか数年でAIを活用したソフトウェア開発は大きく進化し、今ではAIが自律的にタスクを行う「AIエージェント」が主流になりつつあります。

現在地:AI エージェント期がもたらす衝撃

AIエージェントとは何か

AIエージェントとは、単に質問に回答するだけでなく、自律的に行動し、タスクを実行できるAIシステムです。

従来のAIアシスタントとの大きな違いは、人間の指示に対して一回限りの応答を返すだけでなく、継続的・主体的に行動できる点にあります。APIと連携してウェブサイトを操作したり、コードを書いて実行したり、様々なツールを活用しながら複雑なタスクを完了させることができます。

従来のアシスタント AIエージェント
人間 → AI への単発質問 ゴール設定 → AI が自律的に計画・実行
コード補完・回答提示 Web 参照、ファイル操作、コード実行、API 呼び出し
人間が逐次判断 AI 内部でループ学習・自己評価

これから:AI時代のエンジニアの役割

分業から“フルスタック+AI活用”へ

従来の開発現場では、フロントエンド、バックエンド、インフラなど専門領域による分業が一般的でした。しかしAIエージェントの登場により、この分業構造が大きく変わりつつあります。

AIを活用することで、一人のエンジニアが複数の専門領域を横断できるようになり、全員が「フルスタックエンジニア+AI活用スキル」に近い役割を担うようになっていくんじゃないかと思っています。

また、MCPの登場によりAI同士が共通のプロトコルで繋がれるようになったことで、エンジニアは開発以外の業務領域にも容易に踏み込めるようになりました。

今や、エンジニアがマーケティング施策の立案やUIデザイン、データ分析など、これまで専門職が担当していた領域にも関わることが可能になっています。 AIを介して知識の壁が低くなり、一人のエンジニアが幅広い領域で価値を創出できる時代になりつつあります。

特に弊社のような サービスを自社で開発し、サービスを届けるような事業会社はこの傾向が強くなっていくと思っています。

“AI を使いこなすか否か”で生産性が桁違いに

AIエージェントの登場により、「AIを使いこなせるエンジニア」と「そうでないエンジニア」の間で生産性に数十倍もの差が生まれつつあります。

AIを効果的に活用できるエンジニアは、まるで手が10本も20本も生えているかのように、複数のタスクを並列で進行させることが可能 です。

AIエージェントに適切な指示を出し、複数のプロジェクトを同時に進行させながら、自身はより創造的で高度な判断に集中することができます。

一方で、AIツールの活用に消極的なエンジニアは、従来の線形的な作業モデルから抜け出せず、生産性の面で大きな差が生じることになるのではないかと思っております。

将来的には、エンジニアの価値は「どれだけコードを書けるか」ではなく、「AIエージェントをどれだけ効果的に活用できるか」によって測られるようになるかもしれません。 そして、その鍵を握るのは、技術的な知識だけでなく、創造性、問題解決能力や明確なコミュニケーション能力といった、より人間らしい資質が重要になってくると思っています。

“AI ネイティブ開発”へシフトする4つの再定義

AIエージェントを利用したAIネイティブ開発では、これまでのソフトウェア開発の常識が大きく変わりつつあるな〜と感じます。
人間中心の設計・実装から、AIとの協調による開発スタイル「AIネイティブ開発」への転換が求められています。 その実現に向けて、次の4つの視点で再定義する必要があると考えています。

要件定義 → Prompt 設計

従来の要件定義は、仕様書やユーザーストーリーを通じて「人間が人間に伝える」形式でした。しかし、AIが開発の中核を担う時代においては、「人間がAIに意図を正確に伝える」ためのPrompt設計が最重要プロセスです。
AIはプロンプト以外の情報が無いので当たり前っちゃ当たり前ですが、結構軽視しがちなポイントです。

目的の明文化: ユーザーの期待や業務ゴールを、AIが理解可能な言語で記述する。
入力制約・出力期待の明示: AIの挙動を制御するため、入力形式や期待する出力形式を精緻に定義。
失敗ケースの事前想定: 曖昧な指示や過剰な一般化による失敗を防ぐための例示・制限。

Prompt設計は単なる命令文ではなく、「意図と文脈を構造化してAIに伝える」技術です。

実装 → Tool Registry & Executor

従来の実装プロセスでは、開発者が自らコードを書き、機能を実装していました。しかしAIネイティブ開発では、AIエージェントが活用できるツール群(Tool Registry)を整備し、それらを組み合わせて実行する環境(Executor)を構築することが中心的な作業となります。

ツールの標準化: AIが操作可能なAPIやコマンドの整備と標準化
ツールチェーンの構築: 複数のツールを連携させて複雑なタスクを実行するためのワークフロー設計
実行環境の最適化: AIエージェントの実行効率とセキュリティを確保するインフラ整備
これにより、開発者は「コードを書く人」から「AIに適切なツールを与え、実行環境を整える人」へと役割が変化していきます。

観測性 → トレース & コストダッシュボード

AIネイティブ開発では、AIエージェントの動作プロセスと使用リソースを可視化することが重要です。システムの挙動をモニタリングするための新たな観測性の仕組みが必要となります。

プロンプト実行ログ: AIエージェントが受け取ったプロンプトと生成した結果の履歴管理
ツール呼び出しトレース: AIが実行したAPI呼び出しや処理のステップ・順序の可視化
リソース消費モニタリング: APIコールやトークン使用量などのコスト管理システム
従来のアプリケーションモニタリングとは異なり、AIの判断プロセスや学習状況をトラッキングする新たな指標と可視化手法が求められます。

ガバナンス → 出典管理 & 権限制御

AIが自律的に行動する環境では、情報の出典管理や権限の適切な設定が従来以上に重要になります。
自律型AIがDBのadmin権限を持つとなると流石にまだ怖いですよね。

情報出典の追跡: AIが参照した情報源と生成した結果の関連付け管理
アクセス権限のきめ細かな制御: AIエージェントに与える権限の範囲と制限の明確化
コンプライアンス対応: AIの行動に対する監査証跡とレギュレーション対応

AIエージェント時代にエンジニアは何を学ぶべきか?

「AI が全部やってくれるなら、もう勉強しなくていいのでは?」そんな声をときどき聞きます。
実際はむしろ逆で、学習量は爆増 しました。
AIを使いこなすために、AIの "効率的な" 使い方と開発の基礎知識は重要な項目だと思っています。
いくらAIが発達したといえど、AIが今のところはAIが100%開発できるなんてことはなく、ある程度人間の介入が必要だと思います。

以下に、AIエージェント時代に特に重要となる6つの学習領域をご紹介します。これらは私自身がAIと共に開発する日々の中で実感し、これからのエンジニアに不可欠だと思っているスキルセットです。

1. プロンプトエンジニアリングの基礎
先ほど述べたように、要件定義がプロンプト設計に変わっていく中で、AIに正確に意図を伝えるスキルが必須になります。効果的なプロンプトを設計するには、AIモデルの特性や限界を理解し、明確で構造化された指示を出す能力が求められます。

  • 目的と制約の明確化
  • 具体例の提示と反例の活用
  • 段階的な指示の組み立て方
  • エッジケースの想定と対処法

2. システム思考とアーキテクチャ設計
AIエージェントは強力なツールですが、適切なシステム設計なしには機能しません。エンジニアには、AIエージェントを含めた全体システムをどう設計するかという視点が必要です。

  • ツールとAPIの連携設計
  • AIエージェントの責務範囲の定義
  • フォールバック戦略の構築
  • スケーラビリティとパフォーマンスの考慮

3. ドメイン知識の深化
皮肉なことに、AIが進化するほど、特定分野の専門知識の価値は高まります。 汎用的なAIでは対応できない業界特有の問題や規制、慣習などを理解し、AIの出力を適切に評価・修正できる人材が求められます。

  • 業界固有の規制やコンプライアンス
  • 専門用語や業界特有のプロセス
  • 暗黙知やノウハウの形式化
  • ドメイン特化型AIの可能性

4. コラボレーションとコミュニケーション能力
AIエージェント時代には、人間同士のコミュニケーションと人間とAIの協働の両方が重要になります。

  • 複雑な要件をAIに伝える翻訳能力
  • AIの出力を評価・修正するレビュースキル
  • チーム内での知識共有と協力体制の構築
  • 非技術者との効果的なコミュニケーション

5. 技術的基礎力の維持
AIが多くの作業を自動化しても、プログラミングやインフラの基礎知識は依然として重要です。 AIが生成したコードを評価し、必要に応じて修正するためには、基本的な技術理解が欠かせません。

  • データ構造とアルゴリズムの理解
  • 性能最適化の原則
  • セキュリティの基礎
  • テスト戦略の設計

6. 批判的思考と問題解決能力
AIは強力なツールですが、盲目的に信頼することの危険性も理解するべきだと思っています。生成された解決策を批判的に評価し、適切な判断を下せる能力が一層重要になります。

  • AIの出力に対する検証能力
  • エッジケースや例外の発見
  • 倫理的考慮事項の評価
  • 複数の解決策の比較検討

AIエージェント時代のエンジニアは、単なる「コードを書く人」ではなく、「AIと人間の架け橋となる人」 へと進化する必要があります。技術的スキルと人間らしい判断力の両方を備えることで、AI時代においても高い価値を持つエンジニアとして活躍できると考えています。

さいごに

「エンジニア = コードを書く人」という定義は、“エージェントを設計し統治する人” へアップデートされつつあるように感じます。

AIは正直怖いくらい進化していますが、この時代にソフトウェアエンジニアとしてAI最前線で働き、日々AIに触れられる環境にとてもワクワクします。

弊社では、AIエージェント時代の開発スタイルに追従するべく、最先端のAI技術をいち早く取り入れています。新しいAIモデルやツールが登場するたびに検証し、開発フローに組み込むことで、常に業界の最前線で開発を行える環境を整えていきたいと思っています。

株式会社ジャンボではエンジニアを絶賛募集中です!
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